
就労継続支援事業(A型・B型)は、障がいのある方の「働きたい」を支える重要な福祉サービスです。しかし、参入する法人にとっては「福祉」と「ビジネス」の両立が求められるため、事前に十分な準備と理解が不可欠です。
この記事では、これから就労継続支援事業を始めたい法人が特に気をつけるべきポイントを詳しく解説します。
1. 就労継続支援事業の種類と違いを理解する
まず大前提として、就労継続支援にはA型とB型の2種類があり、それぞれ以下のような特徴があります。
種別 | 主な対象者 | 雇用契約 | 報酬単価 | 利用者の特徴 |
---|---|---|---|---|
A型 | 比較的就労能力のある方 | あり(最低賃金) | 高め | 安定して働ける方 |
B型 | 雇用が難しい方 | なし(工賃支給) | 低め | 就労準備段階の方 |
自社の理念や地域のニーズに合ったサービス形態を選ぶことが重要です。
2. 指定基準と人員配置の要件を満たすこと
就労継続支援事業を運営するには、都道府県または指定都市からの**「指定」を受ける必要があります**。そのためには以下の人員配置基準を満たす必要があります。
主な人員基準
- 管理者
- サービス管理責任者(サビ管)
- 職業指導員
- 生活支援員
特にサビ管は実務経験と研修要件があり、事前の計画的な人材確保が必要です。
3. 安定した収益構造と事業計画の策定
就労継続支援事業は、利用者数に応じた報酬制度ですが、特にA型では最低賃金の支払い義務があるため、安定した業務受注や生産活動が必要です。
対策例:
- 地元企業との連携による仕事の確保
- ネット販売や自社製品の企画
- 補助金・助成金の活用
事業継続が難しいと指定取消となるケースもあるため、経営視点が求められます。
4. 運営指導・実地指導への備え
指定後も定期的に「運営指導」や「実地指導」が実施されます。帳票整備・サービス記録・個別支援計画など、福祉事業としての正確な運営が求められます。
不備があると返還・指導・最悪の場合は指定取消になることもあるため、最初から仕組み作りが重要です。
5. 地域との連携と差別化ポイントの構築
利用者の集客や定着には、相談支援事業所や医療機関、特別支援学校との連携が欠かせません。また、事業所の独自性や得意な業務を打ち出し、地域に必要とされる施設を目指しましょう。
例:
- 農業との連携(グリーンファーム型)
- ITスキル支援(在宅支援・PC作業)
- カフェ・ベーカリー併設
6. 指定申請のタイミングと必要書類
就労継続支援事業の指定申請には、法人設立、物件確保、人員確保、運営規定の作成など、準備に最低でも3〜6ヶ月は必要です。
主な必要書類には以下があります。
- 定款・登記事項証明書
- 就業規則・雇用契約書
- 資格証・研修修了証
- 運営規定・個別支援計画書式
- 設備・物件の図面・契約書 など
【まとめ】成功の鍵は「福祉×経営」の両立にあり
就労継続支援事業は、障がい者の自立支援という社会的意義が高い一方で、継続的な経営が求められるハイブリッドな事業です。単に「想い」だけでは成立せず、福祉制度・会計・労務管理・業務獲得など幅広い視点が求められます。
これから始めようと考えている法人様は、ぜひ専門家や先行事例から学びながら、着実に準備を進めていきましょう。
当事務所では、運営指導対策や処遇改善計画書の作成、研修・委員会(法定内・法定外)等の様々なメニューを取り揃えております。
ぜひお気軽にご相談ください。