【障がい福祉・介護事業者向け】定款変更が必要なケースとは?意外と多い落とし穴と注意点

障がい福祉サービスや介護事業を運営する法人にとって、「定款」は単なる設立時の書類ではなく、事業運営そのものの根幹を支える“法人のルールブック”です。
しかし、事業を続けていく中で「本店を移転した」「新しいサービスを始めたい」「法人名を変更したい」など、想定外の変化が生じることがあります。これらのタイミングで、定款の変更が必要になることに気付かないまま運営を続けてしまうケースも珍しくありません。

本記事では、障がい福祉・介護事業に特有の視点から、定款変更が必要なケースと見落としがちな注意点を詳しく解説します。事業の信頼性や指定の維持、加算算定にも直結するため、ぜひ最後までご覧ください。

1.そもそも定款とは?

定款とは、法人の「基本的なルール」を記した法的な文書です。株式会社・合同会社・NPO法人・社会福祉法人など、法人格を持つ団体であれば、設立時に必ず定款を作成し、内容に基づいて運営していくことになります。

定款に記載される代表的な内容は以下の通りです:

目的(事業内容)

・商号(法人名)

・本店所在地

・機関設計(理事・監事・役員など)

・公告方法

・社員・会員に関する規定 など

特に障がい福祉・介護事業では、指定申請や加算届出、自治体との契約・補助金手続きにおいて、「定款に書かれている内容」と「実際の事業内容」に相違があると、申請が通らなかったり、加算が認められなかったりするリスクがあります。

2.定款変更が必要となる主なケース

本店所在地の変更(住所変更)

市町村や都道府県をまたぐ移転を行う場合、定款の「本店所在地」条項の変更が必要になります。

・社会福祉法人やNPO法人では、所轄庁の認可または届出が必要になることもあります。

・さらに、住所変更に伴って指定権者(都道府県や市区町村)も変わる場合は、新たな指定申請や承継手続きが発生することも。

商号(法人名)の変更

法人の名前(例:合同会社ABC → 株式会社XYZ)を変更する場合、定款の商号記載の部分を修正し、登記変更が必要になります。

商号変更後は、行政・金融機関・事業所・利用者・関係事業者への通知も必要となり、実務負担が一時的に増える点にも注意が必要です。

目的(事業内容)の追加・変更

福祉・介護業界では、以下のような事業拡大や方向転換に伴い、「目的」の定款変更が必要となるケースが多くあります。

・居宅介護支援事業(ケアマネ)から、訪問介護や放課後等デイサービスを追加

・移動支援・日中一時支援・短期入所などの地域生活支援事業への対応

・介護タクシーなどの新規参入

目的欄に記載がない状態で指定申請を行うと、補正や却下となるリスクが高く、実務に支障をきたします。

役員構成・機関設計の変更

NPO法人や社会福祉法人において、理事や監事の人数・構成変更新たな機関(評議員会など)の設置には、定款の見直しが必要です。

一部の役員が兼任禁止職に該当する場合も、見直しが求められることがあります。

公告方法の変更

定款には「公告方法」(財務状況などをどこで公開するか)を記載する必要があります。

「官報」と記載されている場合でも、ウェブサイトでの公開に変更したい際には、定款の改正が必要です。

3.よくある見落としポイントと注意点

【目的欄に漏れ】で申請が通らない!

「新しい事業を始める準備は整ったけど、目的欄に書いてなかった…」
これは福祉・介護業界でよくあるミスです。特に指定申請や加算届出、助成金申請などでは、「定款の目的欄に記載されているか」が厳しく見られます。

法人内の“手続き担当者”が定款の更新を知らない

役員の交代や事務長の変更によって、過去の定款変更履歴が引き継がれておらず、登記や届出が漏れることがあります。

登記・自治体への届出忘れ

定款変更後は、原則2週間以内に法務局で登記変更手続きを行わなければなりません。また、指定権者(都道府県や市町村)にも変更届を出す必要があります。これを怠ると、運営指導や実地指導で指摘・是正指導の対象になる恐れがあります。

4.定款変更の流れ(一般的な手順)

変更内容の検討(目的、所在地、機関構成など)

②社員総会や理事会の開催(必要に応じて所轄庁の承認)

③議事録作成・署名押印

④法務局への登記申請(原則2週間以内)

⑤指定権者・行政機関への変更届出

定款の最新版整備・保管

5.定款は“変化する事業”に合わせて整備を

障がい福祉・介護事業は、地域ニーズの変化や制度改正に応じて、柔軟にサービスを広げていく必要があります。そのためには、定款も常に「今の事業内容に合っているか?」を定期的に見直すことが重要です。

サービスを増やしたいのに目的が足りない
事務所を移転したのに定款が旧住所のまま
監事を置いたが定款に書かれていない

このような状態は、行政処分や加算減算リスク、融資トラブルにも直結します。

専門家のサポートでスムーズに対応を

定款変更は、ただ内容を修正するだけでなく、法人内部の議決、登記、行政への届け出など多岐にわたる手続きが必要です。とくに障がい福祉・介護事業では、自治体の判断や制度理解も重要なため、行政書士や司法書士などの専門家に相談するのが安心です。


当事務所では、運営指導対策や処遇改善計画書の作成、研修・委員会(法定内・法定外)等の様々なメニューを取り揃えております。
ぜひお気軽にご相談ください。

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