ブログ

「福祉の現場 × 法務」──現場を守るためのコンプライアンスの考え方(高槻市の介護・障がい福祉専門行政書士が解説)

介護・障がい福祉の現場では、
“よい支援をしたい”という気持ちと、“法令遵守の必要性” が常に隣り合わせにあります。

本来、コンプライアンスとは
「罰せられないためのもの」ではなく、
“現場を守り、利用者を守り、職員を守るための考え方” です。

しかし、多くの事業所では
「コンプライアンス=難しい」「書類を揃えれば大丈夫」
という誤解が未だに根強くあります。

そこで今回は、法律と現場の両側を見てきた行政書士の視点から、
“福祉現場に本当に必要なコンプライアンスの考え方” を分かりやすく解説します。


1|そもそも「コンプライアンス」とは?

●法律を守るだけでは“不十分”

一般的には「法令遵守」と訳されますが、
福祉の現場に必要なのは 法令 + 倫理 + 組織文化 + リスク管理 を総合した視点です。

つまり、コンプライアンスとは以下の総称です:

  • 法令を守る
  • 職員の倫理観を育てる
  • 利用者の尊厳を守る
  • 組織としての判断基準を統一する
  • リスクを予測し、未然に防ぐ

“正しいことを迷いなく選べる組織文化” が、最終的なゴールです。


2|なぜ福祉の現場にコンプライアンスが必要なのか?

福祉現場が他業種よりもコンプライアンスを重視される理由は、
人的サービスの集合体 であり、
支援者の判断がそのまま利用者の生活に影響する からです。

●現場で起きやすい「コンプライアンスリスク」

  • 虐待・身体拘束の誤判断
  • 個人情報の管理不足
  • 支援記録の不備
  • 無資格配置や配置基準の逸脱
  • 口頭依存の引き継ぎ
  • 利用者トラブルの初動遅れ
  • 加算の算定誤り
  • ヒヤリハットの隠蔽

これらはひとつひとつは小さく見えても、
積み重なることで “行政処分”“事故・訴訟” につながるリスクになります。


3|「福祉×法務」で考えるべきコンプライアンスの5本柱

行政書士として現場を支援する中で、
コンプライアンスを確立している事業所には共通点があります。

以下の “5本柱” を仕組み化しているかどうかです。


法令・基準の理解と更新

  • 運営規程
  • 重要事項説明書
  • 体制届
  • 配置基準
  • 加算の算定基準

“職員に覚えさせる”のではなく、
管理者が仕組みとして全体を把握しているか がカギ。


記録の質と一貫性の確保

福祉の記録=組織を守る「最強の証拠」です。

  • アセスメント ⇄ 計画 ⇄ 支援記録 ⇄ 実績
  • 時間・内容・職員名の整合性
  • コピペ文化の排除
  • 個別性・根拠の明記

記録が弱い組織ほど、重大事故が表面化しやすくなります。


職員研修と“判断力”の育成

研修は“義務”ではなく リスク回避の投資 です。

  • 虐待防止
  • 身体拘束
  • BCP
  • 個人情報保護
  • 感染症対策
  • リスクマネジメント
  • ヒヤリハット分析

特に重要なのは、
“判断理由を説明できる職員を育てること” です。


内部コミュニケーションと情報共有の仕組み

ヒヤリハットやミスが共有されない組織は、
“気づいていないだけで危険が蓄積”しています。

  • 引き継ぎは口頭ではなく仕組みに
  • 委員会を形骸化させない
  • 目的を共有した会議運営
  • 管理者が孤立しない相談ルートづくり

正しい情報が正しく共有されること が、事故ゼロの第一歩です。


利用者・家族との信頼関係の維持

福祉現場のトラブルの多くは、
実は「説明不足」「誤解」から起こります。

  • 期待値のすり合わせ
  • 変更点の早期説明
  • 苦情受付体制の整備
  • 記録に残す“説明の証拠”

信頼関係が強い事業所ほど、
クレームは減り、協力関係が深まります。


4|コンプライアンスは「現場を縛るもの」ではなく“現場を守る盾”

よくある誤解に、
「コンプライアンスを重視すると現場が動きにくくなる」
というものがあります。

しかし実際は逆で、
コンプライアンスが整っているほど

  • 職員が迷わない
  • 責任が明確になる
  • 正しい判断が統一される
  • トラブルが早期に防げる
  • 行政指導での指摘が激減する

つまり、現場がもっと自由に支援できる環境になる のです。


5|行政書士としてのまとめ

福祉現場におけるコンプライアンスとは、
「法律に従う」ことだけでも、
「書類を揃える」ことだけでもありません。

本質は、

利用者・家族・職員を守る“仕組みづくり” です。

これが整えば、
現場は迷わず、強く、そして安全になります。

  • 法令と現場をつなぐ
  • 判断基準を統一する
  • リスクを見える化する
  • 組織として“守る力”を高める

これこそが、
“福祉 × 法務”の真のコンプライアンス です。


乾行政書士事務所について|大阪・京都の福祉・介護の指定申請・運営指導対策

医療・介護・障がい福祉の開業・運営なら大阪の乾行政書士事務所

乾行政書士事務所は、大阪府・京都府を中心に、福祉・介護事業の指定申請サポート運営支援を行っている医療・介護・福祉支援に特化した事務所です。

これから就労継続支援放課後等デイサービス訪問介護通所介護などを開業予定の法人・個人様に向けて、指定取得支援を専門的に実施しています。

さらに、「運営支援」では、処遇改善計画書(実績報告書)作成、研修・委員会の実施、運営指導対策(書類チェック)、自治体へ提出する書類の作成、BCP作成支援等を行っています。

事業内容

  • 障がい福祉サービス事業(就労継続支援、生活介護、放課後等デイサービス 、居宅介護、相談支援事業所等)
  • 介護保険サービス事業(通所介護、訪問介護、認知症グループホーム 等)
  • 福祉・介護事業向け指定申請サポート(法人設立、書類作成、運営指導対策 等)
  • 運営支援(運営指導対策(書類チェック)、処遇改善計画書(実績報告書)作成、研修・委員会の実施、補助金サポート、自治体へ提出する書類の作成(例:変更届出等)、BCP作成支援)

対応エリア

  • 大阪府:箕面市・豊中市・吹田市・茨木市・高槻市・枚方市・交野市・寝屋川市・大阪市 ・四條畷市・東大阪市など
  • 京都府:京都市・長岡京市・向日市・八幡市・宇治市 ・亀岡市など
  • 全国対応可能(全国対応プランあり)

乾行政書士事務所の強み

  • 現場経験のある行政書士、社会保険労務士による実務的アドバイス
  • 障がい福祉と介護保険の両分野に対応可能
  • 法人設立から指定申請、運営フォローまで一貫対応
  • 自社運営施設による「現場視点」でのコンサルティング
  • 介護、障がい福祉の様々なサービス形態の実績あり

お問い合わせ・ご相談

指定申請のご相談、開業サポート、運営支援のご依頼など、まずはお気軽にご連絡ください。

福祉・介護事業の立ち上げから継続運営まで、全力でサポートします。


当事務所では、障がい福祉・介護事業の支援に加え、ご利用者やご家族の生活全体を支えるため、遺言・後見・死後事務などの民事業務にも対応しています。現場の実情を理解した行政書士として、福祉と法務の両面から支援いたします。

関連記事

  1. 身体拘束適正化委員会とは?どうすればいいの|高槻市の介護・障がい…
  2. BCPは「書くだけ」では意味がない──本当に機能する危機管理とは…
  3. 実地指導で指摘されやすい書類ベスト5(ランキング)|高槻市の介護…
  4. 放課後等デイサービスと児童発達支援の違いとは?|高槻市の行政書士…
  5. 管理者が孤立しないために──組織を支える「外部の目」とは?専門の…
  6. 身体拘束・虐待防止のための体制整備とは?|高槻市の介護・障がい福…
  7. 法改正に強い事業所をつくるための情報管理のコツ│高槻市の障がい福…
  8. BCP・虐待防止・身体拘束適正化の3つの委員会運営ガイド|高槻市…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP