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介護・障がい福祉事業所では、長年勤務しているベテラン職員が現場を支えているケースが少なくありません。
業務の流れをよく理解している。
利用者のことをよく知っている。
新人職員の指導もできる。
トラブルが起きたときにも適切に対応できる。
このようなベテラン職員は、事業所にとって非常に重要な存在です。
一方で、ベテラン職員に仕事や判断が集中しすぎている場合には注意が必要です。
「○○さんに聞けば分かる」
「○○さんがいないと現場が回らない」
「難しいケースは○○さんに任せている」
という状態が当たり前になっていると、知らないうちに組織の「属人化」が進んでいる可能性があります。
今回は、ベテラン職員に頼りすぎることで起こり得るリスクと、特定の職員に依存しない組織づくりについて解説します。
最初に理解しておきたいのは、ベテラン職員に頼ること自体が悪いわけではないということです。
長年の経験によって培われた知識や技術は、マニュアルだけでは簡単に身につくものではありません。
利用者の特徴を理解していたり、過去のトラブルや対応方法を知っていたりすることもあります。
また、新人職員に仕事を教えたり、現場でアドバイスをしたりする役割も期待できます。
問題なのは、「ベテラン職員がいること」ではなく、「ベテラン職員がいないと組織が機能しない状態」です。
ベテラン職員の経験を組織全体の財産にできているかどうかが重要になります。
最も分かりやすいリスクが、ベテラン職員の不在です。
普段から、「このことは○○さんしか分からない」「○○さんが判断している」
という状態になっていると、その職員が休んだだけで現場が困ってしまいます。
例えば、
・利用者への対応方法が分からない
・業務の進め方が分からない
・必要な書類の場所が分からない
・過去の経緯を把握している人がいない
・トラブル発生時に誰へ相談すればよいか分からない
といった問題が起こる可能性があります。職員が休むことは当然あります。
だからこそ、誰かが休んでも一定の水準で業務を継続できる体制をつくることが重要です。
ベテラン職員が退職すると、これまで事業所内で蓄積されてきた知識や経験が一緒に失われてしまうことがあります。
特に注意したいのが、
「本人は当たり前だと思っているため、文書化されていない知識」
です。
例えば、
「この利用者にはこういう声掛けをすると落ち着く」
「この業務はこの順番で行ったほうがスムーズ」
「以前、このような問題があったので注意が必要」
といった情報です。
こうした経験は非常に価値があります。
しかし、本人の頭の中だけにある状態では、退職した瞬間に組織から失われてしまいます。
ベテラン職員に仕事が集中していると、新人職員が自分で考えたり、判断したりする機会が減ることがあります。
例えば、
「分からなければ○○さんに聞いて」
という状態が続くと、新人職員は自分で調べたり、考えたりするよりも、ベテラン職員に聞くことが習慣になってしまいます。
もちろん、経験豊富な職員に相談することは大切です。
しかし、「聞けば答えがもらえる」
という状態が続けば、職員自身の判断力が育ちにくくなる可能性があります。
ベテラン職員の知識を活用しながら、少しずつ新人職員が自分で考えられるようにすることが重要です。
ベテラン職員に頼りすぎると、その職員自身に大きな負担がかかります。
例えば、
・新人職員の指導
・現場の判断
・利用者対応
・他職員からの相談
・管理者からの依頼
などが一人に集中してしまうことがあります。
最初は、「頼られるのはうれしい」
と思っていても、長期間にわたって負担が集中すれば、疲労やストレスにつながる可能性があります。
そして最悪の場合、「自分ばかり負担が大きい」という不満から、退職につながってしまうことも考えられます。
ベテラン職員を大切にするためにも、仕事を一人に集中させないことが重要です。
ベテラン職員に現場を任せることは、管理者の負担軽減にもつながります。
しかし、任せすぎには注意が必要です。
「現場のことは○○さんに任せています」
という状態になると、管理者が現場の実態を把握しにくくなることがあります。
例えば、
・どのような問題が起きているのか
・職員間の関係はどうなっているのか
・利用者への支援に問題はないか
・業務負担が偏っていないか
などが見えにくくなる可能性があります。
ベテラン職員から報告を受けることは重要ですが、管理者自身も現場を見ることが大切です。
長年勤務している職員には、「これまでずっとこの方法でやってきた」という経験があります。
その経験は大切ですが、注意したいのは、
「その人の経験」と「事業所として決められたルール」を混同しないこと
です。
例えば、
「昔からこうしている」
「前の管理者もこうしていた」
という理由だけで業務が続いている場合があります。
事業所のルールや業務方法は、必要に応じて見直すことが大切です。
経験を尊重しながらも、「現在のルールとして適切なのか」という視点から確認する必要があります。
ベテラン職員だけが重要な仕事を任されていると、他の職員が、
「自分には任せてもらえない」
「どうせ○○さんが決める」
と感じてしまうことがあります。
逆に、ベテラン職員側が、「自分ばかり仕事をしている」と感じることもあります。
このような状態になると、職員同士の不満につながる可能性があります。
組織として仕事を分担し、役割を明確にすることが大切です。
ベテラン職員を活用するうえで重要なのは、「頼る」だけで終わらせないことです。
例えば、「○○さんしかできない仕事」を減らし、「○○さんの知識を他の職員にも伝える」
という方向へ変えていきます。
ベテラン職員に、「新人職員に教えてください」とお願いするだけでもよいでしょう。
さらに、「なぜその対応をするのか」「どのような点に注意しているのか」
まで言語化してもらうことで、経験を組織全体の知識に変えていくことができます。
ベテラン職員の頭の中にある知識を、少しずつ見える化していくことも重要です。
例えば、
・業務マニュアル
・対応手順
・チェックリスト
・新人職員向け資料
・申し送り事項
・事例共有
などに整理します。
すべてを完璧に文書化する必要はありません。
まずは、「○○さんがいなくても分かるようにしておきたいこと」から整理していくとよいでしょう。
例えば、ある利用者への対応について、ベテラン職員だけが詳しいのであれば、
「○○さんに聞く」という仕組みから、チームで情報を共有する」という仕組みに変えていきます。
担当者だけでなく、複数の職員が一定の情報を共有していれば、急な休みや退職があっても対応しやすくなります。
情報共有は、ベテラン職員の負担を減らすだけでなく、事業所全体の対応力を高めることにもつながります。
特に注意したいのが、「ベテランだから」
という理由だけで、管理者のような役割まで任せてしまうことです。
例えば、
「現場のことは全部○○さんに任せる」
「職員の相談は○○さんに任せる」
「新人教育も全部○○さん」
という状態です。
ベテラン職員には経験や能力があっても、管理者とは役割が異なります。
誰が管理者として判断するのか、誰が現場のリーダーなのかを明確にすることが重要です。
ベテラン職員の経験を最大限に活かす方法の一つが、
「自分が頑張る」から「次の人材を育てる」へ役割を変えていくことです。
例えば、
「この仕事は私がやります」ではなく、「この仕事を○○さんに教えます」という状態を目指します。
これによって、ベテラン職員の経験が次の世代へ引き継がれていきます。
結果として、事業所全体の人材育成にもつながります。
組織づくりでは、「この職員が明日休んでも、仕事は回るだろうか?」という視点が重要です。
もし、「○○さんが休むと何も分からない」
という業務があるなら、その業務は属人化している可能性があります。
一つずつ、「他の職員でもできるようにするにはどうすればいいか」
を考えてみましょう。
ベテラン職員は事業所にとって貴重な人材です。
だからこそ、「できるから任せる」を繰り返すのではなく、「できる人だからこそ、負担を集中させない」
という考え方も必要です。
ベテラン職員が長く働き続けられる環境をつくることは、事業所にとって大きなメリットになります。
ベテラン職員に頼りすぎることには、さまざまなリスクがあります。
特に注意したいのは、
・ベテラン職員が休むと現場が混乱する
・退職によってノウハウが失われる
・新人職員が育ちにくくなる
・ベテラン職員自身が疲弊する
・管理者が現場を把握しにくくなる
・ベテラン職員独自のやり方が事業所のルールになってしまう
・職員間の不公平感につながる
といった点です。
ただし、ベテラン職員の存在は決してリスクそのものではありません。
重要なのは、「ベテラン職員に頼る組織」から「ベテラン職員の経験を組織全体で活用する組織」へ変えていくこと
です。
ベテラン職員の知識や経験をマニュアルや研修、情報共有などに落とし込み、他の職員へ引き継いでいく。
そして、特定の職員が休んでも、退職しても、一定の水準で業務を継続できる体制をつくる。
これが、安定した事業所運営につながります。
「○○さんがいないと困る」という状態は、その職員が優秀である証拠かもしれません。
しかし同時に、「○○さんがいなくても困らない仕組みをつくる」
ことが、管理者に求められる重要な仕事でもあります。
ベテラン職員を頼ることから、ベテラン職員の経験を次の世代へ引き継ぐことへ。
その視点を持つだけでも、事業所の組織づくりは大きく変わっていくのではないでしょうか。
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