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介護・障がい福祉事業所を運営していると、「管理者がいつも忙しい」「経営者が現場のことまで判断している」
「職員からの相談が管理者に集中している」「誰かが休むと業務が回らなくなる」
「書類や手続きが担当者任せになっている」といった問題が起こることがあります。
一つひとつを見ると、それほど大きな問題に感じないかもしれません。
しかし、こうした状態が長く続くと、管理者や経営者の負担が少しずつ大きくなり、結果として法人全体の運営が不安定になることがあります。
今回ご紹介するのは、こうした問題をきっかけに管理体制そのものを見直したことで、徐々に法人運営が安定していったケースです。
※特定の法人・事業所を紹介するものではなく、介護・障がい福祉事業所で起こり得る状況をもとにした事例です。
ある事業所では、長年勤務している管理者が中心となって現場を運営していました。
管理者は経験豊富で、利用者のことも職員のこともよく理解しています。
職員から相談されればすぐに答え、現場で問題が起きれば自ら対応する。
行政関係の書類についても、管理者が中心になって確認していました。
そのため、一見すると非常にしっかりした事業所です。
しかし、管理者本人は次第に、「自分がいないと現場が回らない」と感じるようになっていました。
この事業所で最初に見直したのは、「なぜ管理者に仕事が集中しているのか」という点でした。
よく確認してみると、
・職員からの相談がすべて管理者に集まる
・現場の判断を管理者がすべて行う
・新人教育も管理者が中心
・書類確認も管理者が中心
・行政への手続きも管理者しか把握していない
・トラブル対応も管理者が直接行う
という状態になっていました。
つまり、管理者が優秀だったからこそ、多くの仕事が管理者に集まっていたのです。
しかし、この状態では管理者が休むことが難しくなります。
さらに、管理者が退職した場合には、事業所の運営に大きな影響が出る可能性があります。
そこで最初に行ったのが、業務の整理です。
管理者が行っている仕事を一つひとつ書き出して、「本当に管理者がやるべき仕事なのか?」
を確認しました。
例えば、
・管理者が判断すべきこと
・リーダーに任せられること
・一般職員でも対応できること
・事務担当者が行うこと
などに分けていきました。
これだけでも、管理者が抱えていた業務の多さが見えるようになりました。
次に取り組んだのが、管理者が仕事を抱え込まない仕組みです。
例えば、すべての職員から管理者へ直接相談するのではなく、内容によってはリーダーや担当者が最初に対応するようにしました。
もちろん、重要な問題や判断が必要な事項については、管理者へ報告します。
つまり、「管理者が全部対応する」という体制から、
「職員が一定の範囲で対応し、必要なことを管理者へ報告する」
という体制へ変えていったのです。
最初は、「本当に自分たちで判断していいのですか?」と戸惑う職員もいました。
これまで何かあれば管理者に確認することが習慣になっていたからです。
そこで、
「ここまでは自分で判断していい」
「この場合は管理者へ相談する」
という基準を少しずつ整理していきました。
すると、職員が自分で考えて行動する場面が増えていきました。
管理者にとっても、すべてのことを細かく指示する必要がなくなっていきました。
もう一つ見直したのが、ベテラン職員への依存です。
これまで、
「この利用者のことは○○さんに聞けば分かる」
「この業務は○○さんしかできない」
という状態がありました。
そこで、ベテラン職員が持っている知識や経験を、他の職員にも共有するようにしました。
業務の手順を整理したり、事例を共有したり、必要な情報を記録として残したりすることで、特定の職員だけに知識が集中しないようにしました。
結果として、ベテラン職員自身の負担も少しずつ減っていきました。
さらに、行政への届出や書類管理についても見直しました。
以前は、「○○さんが全部管理しています」という状態でした。
担当者が休むと、「どこまで手続きが進んでいるのか分からない」ということもありました。
そこで、
・何の手続きなのか
・いつまでに必要なのか
・誰が担当するのか
・現在どこまで進んでいるのか
・提出後の確認は済んでいるか
などを管理できるようにしました。
これによって、担当者が不在でも状況を確認しやすくなりました。
管理体制を一度整えれば、それで終わりではありません。
事業所の規模が変わったり、職員が入れ替わったり、新しいサービスを始めたりすると、以前は問題なかった体制が合わなくなることがあります。
そこで、定期的に、
「今の体制で問題はないか」
「仕事が特定の職員に集中していないか」
「管理者が抱え込みすぎていないか」
「職員が適切に判断できているか」
を確認することにしました。
管理体制を見直したことで、経営者にも変化がありました。
以前は、現場から問題が起きるたびに経営者が直接判断していました。
しかし、管理者が一定の範囲で判断できるようになったことで、経営者が細かな現場対応に追われることが減りました。
その結果、
「これから法人をどうしていくか」
「人材をどう育てるか」
「事業をどのように継続していくか」
といった、経営者本来の仕事について考える時間を確保できるようになりました。
管理体制を見直したからといって、問題が完全になくなるわけではありません。
重要なのは、問題が起きたときに、「誰が対応するのか」「誰に報告するのか」「どのように記録するのか」
が明確になったことです。
以前は問題が大きくなってから経営者や管理者が知ることもありました。
しかし、報告や相談のルールを整理したことで、早い段階で問題を把握できるようになりました。
これは、法人を安定させるうえで非常に重要な変化です。
この事例から分かるのは、法人の安定は、特定の優秀な職員だけに支えられている状態とは違う
ということです。
もちろん、経験豊富な職員や優秀な管理者は重要です。
しかし、その人が休んだり退職したりすると運営できなくなるのであれば、組織としては不安定です。
大切なのは、「誰かが頑張る」という状態から、「組織として対応できる」
という状態へ変えていくことです。
安定した組織をつくるためには、経営者、管理者、リーダー、現場職員など、それぞれの役割を整理することが重要です。
経営者は法人全体の方向性を考える。
管理者は事業所の運営を管理する。
リーダーは現場を支える。
職員はそれぞれの役割を担う。
そして、それぞれが必要な情報を共有する。
このように役割を整理することで、一人に過度な負担が集中することを防ぎやすくなります。
管理体制の見直しというと、「今までのやり方が悪かったのか」「誰かの仕事に問題があったのか」
と考えてしまうかもしれません。
しかし、本来の目的は誰かを責めることではありません。
むしろ、「今いる職員が無理なく働き続けられるようにする」ことが重要です。
仕事が一人に集中しているのであれば、その人の能力に頼るのではなく、組織として支える方法を考えます。
管理体制の見直しは、問題が起きてから行う必要はありません。
むしろ、「今は特に問題ありません」という時期に確認しておくことが大切です。
例えば、
「この職員が1週間休んだらどうなるか?」
「管理者が突然休んだら誰が判断するか?」
「担当者が退職したら行政手続きの状況を誰が把握できるか?」
と考えてみます。
そこで答えが出てこない部分があれば、それが現在の組織にある「見えないリスク」かもしれません。
管理体制を見直して法人を安定させるためには、特別なことを一気に始める必要はありません。
まずは、
・誰が何を担当しているのか
・誰が判断するのか
・誰に相談するのか
・誰に報告するのか
・特定の職員に仕事が集中していないか
・管理者が抱え込みすぎていないか
・担当者が不在でも業務を継続できるか
を確認することから始めます。
今回の事例のように、管理体制を見直すことで、管理者や経営者の負担が減り、職員が自分で判断できる場面が増え、組織全体で情報を共有できるようになることがあります。
そして何より大切なのは、「誰かが頑張らなければ回らない法人」から「仕組みで安定して運営できる法人」へ変えていくことです。
人は必ず入れ替わります。
管理者も変わります。
ベテラン職員も退職することがあります。
だからこそ、特定の人の経験や能力だけに頼るのではなく、誰が担当しても一定の水準で業務を継続できる管理体制をつくることが重要です。
「今は問題なく運営できているから大丈夫」と考えるのではなく、
「今の体制が将来も続けられるのか」
という視点で、一度法人の管理体制を見直してみてはいかがでしょうか。
それが、将来のトラブルや管理者の負担を減らし、長く安定した法人運営を続けるための第一歩になります。
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